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香りと心の関係としてよく引き合いに出される作品に、マルセル・プルーストによる『失われし時を求めて』があります。
物語は、主人公がふと口にした紅茶に浸したマドレーヌの味から、幼少期の記憶に遡ることによって始まるのですが、記憶が蘇るきっかけが紅茶とマドレーヌの味そして香りであるというところが今回のお話のポイントです。
小説の例を引き合いに出したのですが、こうした事例は日常を振り返ると結構あるのではないでしょうか。私など、とある香水の香りを嗅ぐとその当時の恋人との記憶が戻ってきますし、薔薇の香りを嗅ぐと、なぜか幼少の頃の記憶が蘇ってくるような気がします。
前者の香水の例は、明らかな関連付けに基づいていますのでまぁいいとして、後者の薔薇の香り、これはちょっと不思議な感じがします。というのも、これがあくまで漠然としたもので、実際にあった出来事を思い出すというよりも、何か幼少期そのもののイメージみたいなものが心に満ち溢れる、そんな感じだからです。
何やら薔薇の香りには、幼少期という、いわば守られた穏やかな時期のイメージを呼び起こす力がある、そんな気がしてなりません。だとすると、薔薇の香りには、普段ストレスなどで傷つけられている心を優しく癒してくれるパワーがあるといえるのかもしれません。